性感染症(STD)とは?

性感染症(STD)とは、性行為によって、皮膚や粘膜を通して感染する病気の総称です。放置しておくと不妊の原因になるものや、カラダに重大なダメージを与えるものもあります。何か異常を感じたり、不安を感じる行為をしてしまった場合は、必ず検査を受けるようにしてください。

見逃さないで!「おりもの」の変化

「おりもの」は女性性器から出るさまざまな分泌物の総称で、「帯下(たいげ)」とも呼ばれます。主に腟壁の古い細胞や子宮頸管からの粘液、皮脂腺や汗腺からの分泌物などが混じり合っています。

STDに感染した女性では、おりものの量や色やにおいに異常が見られることもありますので、おりものの変化に気づいた時は、放っておかずに診察を受けましょう。

性感染症(STD)には

STDにはクラミジア感染症、淋菌感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、トリコモナス感染症、梅毒、けじらみ、肝炎、HIV感染/エイズなどがあります。
近年、代表的なSTDとされた梅毒は次第に影をひそめ、代わって自覚症状に乏しいクラミジア感染症やHIV感染などがひろがってきました。

このように症状の出ない感染もあることから、最近ではSTD(Sexually Transmitted Disease:性感染症)という名前以外に、STI(Sexually Transmitted Infection:性感染)と呼ばれることもあります。

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性感染症(STD)のこんな方法で感染

垂直(母子)感染

母親の胎盤から胎児に感染させたり、生まれてくるときに産道で感染することを垂直感染といいます。このような感染を予防するためにも、妊娠中には積極的にSTDの検査を受け、治療や出産方法などについて相談する必要があります。

ピンポン感染

カップルの片方が性感染症にかかった場合、性行為によってパートナーにも病気をうつしている可能性があります。ですから、本人が治療して治っても、パートナーも治療しなければ、その後の性行為によって再び感染してしまいます。

こうしたピンポン玉のやりとりのような繰り返しを防ぐため、どちらかがSTDと診断された場合は2人同時に治療することが大切です。

クラミジア感染症とは?

クラミジア感染症は10代~20代前半の女性を中心に最近増えてきている性感染症です。女性の性感染症の中では、HPV感染を除くと最も多く、症状がほとんど出ないために、気づかないことが多いです。

クラミジア感染症の症状

男女ともに、感染してもほとんど症状が出ないのが特徴で、そのため、感染に気づかず、パートナーが変わるごとに次々に感染を拡げてしまう危険性があります。

女性は、子宮頸管炎が起きると水っぽいおりものが増えたりおりものに少量の出血が混ざったりすることがあります。尿道や膀胱に菌が入ると、頻尿や排尿痛などの膀胱炎症状を引き起こします。

クラミジアによる炎症が卵管に拡がると「卵管炎」を引き起こし、卵管閉塞の原因となります。卵管閉塞になると、将来卵管性不妊や子宮外妊娠のリスクが高くなります。

クラミジア感染症の原因

クラミジアトラコマティスという細菌が原因です。性交渉によって尿道や子宮頚管や喉の奥にクラミジアが感染します。喉への感染もあるため、性器同士の接触がなくても感染する場合があります。

淋菌感染症とは?

淋菌感染症は、性器クラミジア感染症と並んで頻度の高い性感染症です。クラミジアは男性より女性の感染者が多いのに対し、淋菌感染症は男性の方が多い傾向にあります。1回の性行為による感染率は約30%と、比較的感染力が高いので注意が必要です。

淋菌感染症の症状・不妊症との関係

女性の場合の淋菌感染症の症状は、子宮の出口に感染が起きてもほとんどが症状が出ないため、男性に比べ感染に気づきにくいのが特徴です。まれに粘り気のある膿のようなおりものが増えたり、バルトリン腺に炎症を起こして膣の出口の下側が大きく腫れたりすることがあります。

感染が子宮や卵管を通じてお腹の中まで拡がり「骨盤腹膜炎」の状態になると、発熱や強い下腹部痛が出現し、将来的な卵管不妊や子宮外妊娠の原因になります。

出産の時に淋菌に感染していると、赤ちゃんが産道で感染してしまい、淋菌による結膜炎を起こすことがあるので、妊娠を望む前には性感染症検査を受けて感染していないことを確認しておいた方が安心です。

性器ヘルペスとは?

女性の性感染症の中でクラミジアに次いで多い性器ヘルペスです。原因となる単純ヘルペスウイルスに感染しても、はっきりとした症状が出ないまま、相手に感染させる力だけ持っている状態になることがあるために、自分が感染源である自覚がないままにウイルスを蔓延させてしまうことがあります。

性器ヘルペスの症状

女性の場合の性器ヘルペスの症状は、初発の場合、2~10日間の潜伏後に比較的突然外陰部の痛みが出現します。外陰部に複数の水ぶくれや潰瘍ができ、排尿時にしみたり、痛みのせいで排尿や歩行が困難になることもあります。38℃以上の熱がでることもあり、足の付け根のリンパ節が腫れて押さえると痛みを伴います。ときに強い頭痛や首筋が硬くなるような症状が出たり、尿や便が出しにくいといった神経麻痺の症状が出ることもあります。

再発の場合、初発よりも症状は軽く、水ぶくれの数も少なくて済むことがほとんど。再発の前に、外陰部の違和感や太ももから足先にかけてのピリピリする感じなどの前兆がでることもあります。一度感染すると、ウイルスは体内に潜伏して完全に排除されることはないため、何度も再発してしまう場合があります。

性器ヘルペスと妊娠・出産

女性の場合、出産時に性器にヘルペスウイルスが排出されていると、新生児に感染してしまい重篤なヘルペス感染症を引き起こすことがあり、新生児ヘルペスは死に至ることもあるため、感染リスクが高い場合は帝王切開を行なうことになります。

性器ヘルペスの原因

単純ヘルペスウイルス1型や2型の性行為による感染が原因です。口唇に感染したヘルペスウイルスが、オーラルセックスにより性器に感染することもあります。

尖圭コンジローマとは?

尖圭コンジローマは20代の女性を中心に感染が広がっている性感染症です。潜伏期間が長く、治療後の再発率も高いため、感染機会が特定しにくい場合があります。
女性の場合、尖圭コンジローマになった人の一部に、子宮頸がんの原因となるハイリスクタイプのHPVに同時感染していることがあるため注意が必要です。

尖圭コンジローマの症状

外陰部や肛門周囲に鶏冠状のイボができます。痛みや痒みを伴うことは少なく、イボに気づかなければほとんど無症状なため、気づかないうちに病気が広がっていたり、複数のパートナーに感染させてしまうことがあります。

出産の時に膣内や外陰部にイボがあると、そこからHPVが感染し、赤ちゃんにコンジローマのイボができたり、喉にウイルスによるイボができたりすることがあります。

尖圭コンジローマの原因

オーラルセックスも含めた性行為によって、HPV(ヒトパピローマウイルス)の6型や11型に感染することで発症します。感染してから、目で見て分かる「イボ」ができるまでに3週間~8ヶ月間の潜伏期間がありますので、感染機会を特定できないケースもあります。

HPVは100種類以上の「型」があり、6型や11型は皮膚にイボを作るタイプのものです。陰茎がんや子宮頸がんの原因となることはないため「ローリスクタイプ」に分類されています。

尖圭コンジローマと子宮頸がん

同じHPV(ヒトパピローマウイルス)でも16型や18型の「ハイリスクタイプ」に分類されているものが子宮頸部に感染すると、子宮頸がんのリスクが高くなります。ローリスクタイプとハイリスクタイプの両方に感染することも珍しくありません。

感染=がんになるというわけではありませんが、ハイリスクタイプのHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染した場合はよりこまめに子宮頸がん検診を受ける必要があります。

トリコモナス感染症とは?

広義のトリコモナス感染症は、膣トリコモナス、腸トリコモナス、口腔トリコモナス、ウシ胎仔トリコモナスなどのトリコモナス原虫によって起こされる感染症です。ここでいうトリコモナス感染症は、膣トリコモナスが女性の性器に感染して起こされる感染症のことです。

トリコモナスが膣に感染して炎症を起こしたものを膣トリコモナス症といい、性交渉で簡単に感染してしまい、最近は数が減ってきていますが、まだまだ重要な感染症のひとつです。

膣の中だけではなく、子宮頸管や尿道、またパートナーの尿路や前立腺などにも潜んでいますのでピンポン感染(カップルの間で、お互いにうつし、うつされをくり返すこと)を起こします。

膣トリコモナス症の症状

主な症状は、外陰部の強い痒みや膣の刺激感と、泡状の臭いが強いおりものです。膣内だけでなく、尿道や膀胱に感染すると、頻尿や排尿時の痛みなどの尿道炎膀胱炎症状を引き起こすこともあります。

トリコモナス膣炎の原因

トリコモナス原虫の感染が原因です。主な感染経路は性行為ですが、性交経験のない女性でも感染していることがあることから、下着やタオルや浴槽などからの感染もありうると考えられます。

梅毒とは?

スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマの感染によって生じる性感染症です。

梅毒の症状

梅毒は第Ⅰから第Ⅳ期まで、感染からの時間とともに症状が変わります。Ⅰ期梅毒として感染後3~6週間の潜伏期の後に、感染局所に初期硬結や硬性下疳、無痛性の鼠径部リンパ節腫脹がみられます。Ⅱ期梅毒では、感染後3ヵ月を経過すると皮膚や粘膜に梅毒性バラ疹や丘疹性梅毒疹、扁平コンジローマなどの特有な発疹が見られます。
感染後3年以上を経過すると、晩期顕症梅毒としてゴム腫、梅毒によると考えられる心血管症状、神経症状、眼症状などが認められることがあります。

梅毒の原因

梅毒トレポネーマという細菌による性行為感染症です。性行為によって、皮膚や粘膜の小さな傷から梅毒トレポネーマが侵入することで感染します。傷から入った梅毒トレポネーマ、は血液に乗って全身に広がり、皮膚や内臓に様々な症状を引き起こします。

ケジラミ症とは?

ケジラミ症とは、体長1mm前後の吸血性昆虫であるケジラミが寄生することによって発症し、主に性行為によって感染する性行為感染症です。陰毛の毛根に寄生し、シミやフケにしか見えないので発見が遅れる場合もあります。成虫は陰毛の毛根にフック状の爪で体を固定し血液を吸い取ります。

ケジラミ症の症状

ケジラミの寄生した部分の痒みのみで、湿疹のような赤みなどは出ないのが特徴です。主な寄生部位は陰毛なので、外陰部や恥骨の周囲に痒みが出ることが多いのですが、肛門周囲や太ももの体毛にも寄生することがあるので広い範囲に痒みを感じる場合があります。感染してすぐに痒みが出ることは少なく、感染から約1~2ヵ月後に痒みを自覚するようになります。

ケジラミ症の原因

ケジラミの感染経路はほとんどが陰毛同士が直接接触することなので、性行為による感染が大部分を占めます。寝具やタオルを介する間接的感染もありえますが、ケジラミは人間の体から離れると長くても48時間くらいしか生存できず、1日の移動距離は約10センチ程度ですので、直接的感染がほとんどです。

肝炎ウイルス感染とは?

肝炎ウイルスはHAVと呼ばれるA型肝炎ウイルス、B型(HBV)、C型(HCV)、D型(HDV)、E型(HEV)、G型(HGV)に分けられ、またTTウイルスも肝炎ウイルスに含まれると考えられています。このうち、性行為で感染することはB、D型で指摘されており、C型での感染率は低いのですが、その可能性は否定されていません。

キスしただけで忘れた頃に肝炎になる性行為感染症があるかというと、あります。キス病(Kissing disease)というもので、唾液中に病原体が存在できるために、キスだけで移ってしまう可能性があります。キス病には、伝染性単核球症という病名がついています。この単核球症はリンパ球のことで、原因となるEBウイルスがある型のリンパ球に感染すると、そのリンパ球を攻撃する別の型のリンパ球が増加し、ウイルス感染したリンパ球を攻撃するわけですが、その攻撃の場所が肝臓に及ぶと肝炎と似た症状になります。

症状としては、だるさ、食欲不振、少しのお酒で酔いが回ります。場合によっては、尿の色や白目の色が黄色または茶色っぽく変わる黄疸を起こすことがあります。しかし、ほとんどが自然に治ってしまいます。

B型肝炎について

B型肝炎も性行為感染症が原因です。B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)が血液・体液を介して感染して起きる肝臓の病気です。HBVは感染した時期、感染したときの健康状態によって、一過性の感染に終わるもの(一過性感染)とほぼ生涯にわたり感染が継続するもの(持続感染)とに大きくわかれます。

思春期以降にHBVに感染すると、多くの場合一過性感染で終わります。感染の原因のほとんどはHBV慢性感染者との性的接触によるものですが、入れ墨、ピアスの穴開け、カミソリや歯ブラシの共用の際、HBV持続感染者の血液が付着したままで次の人が使用すると感染の可能性があります。

一方、HBVが慢性感染している人の大部分は、母親がHBVの持続感染者で、出産時に産道出血によりHBVが新生児の体内に侵入することにより感染します。

また従来は健康な人に発症した急性B型肝炎は慢性化しないといわれてきましたが、近年ジェノタイプA型と呼ばれる、欧米型やアジア・アフリカ型といった外来種のHBVに感染すると比較的高率に慢性化を起こすことも知られています。

B型肝炎の症状

B型肝炎は、成人がHBVに感染したときに一過性に発症する急性肝炎とHBVの持続感染者に起きる慢性肝炎の2つに大きく分けられます。

B型急性肝炎は、HBVに感染してから1〜6ヵ月の潜伏期間を経て、全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、褐色尿、黄疸などが出現します。尿の色は濃いウーロン茶様であり、黄疸はまず目の白目の部分が黄色くなり、その後皮膚も黄色みを帯びてきます。一方、B型慢性肝炎では、一般に急性肝炎でみられる症状は出現しにくく、自覚症状はほとんどありません。

しかしB型慢性肝炎では、しばしば「急性増悪」と呼ばれる一過性の強い肝障害を起こることがあります。この際には急性肝炎と同様に、全身倦怠感、食欲不振、褐色尿、黄疸が出現することがあります。

HIV感染/AIDSとは?

HIVとはウィルスの名前で、Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウィルス)の頭文字をとった略称です。HIVはヒトの血液中や、精液・膣分泌液などにいて、これらの体液がほかのヒトの粘膜(たとえば、眼・口の中・尿道の先・膣や肛門の中など)や、傷ついた皮膚に触れると感染する可能性があります。

HIVはヒトの体に入り込むと、白血球の一種であるCD4リンパ球という細胞に感染します。すると、徐々にCD4が破壊されていきます。CD4リンパ球は、ヒトの免疫を担当する司令塔の役割をしている細胞なので、減少するとヒトの免疫のはたらきが弱くなっていきます。CD4リンパ球の数は、血液検査で測定することができます。

AIDSとは?

HIVに感染しただけでは症状のない人も多いのですが、CD4リンパ球の減少とともに徐々に免疫力が低下し、通常は病原性のほとんどない微生物による感染症(日和見感染症)などの合併症を発症します。ニューモシスチス肺炎など厚生労働省が定めた23の合併症のいずれかを発症した場合、AIDSと診断されます。

AIDSは、Acquired Immunodeficiency Syndrome(後天性免疫不全症候群)の略称です。つまり、AIDSは病気の名前で、HIVはそれを引き起こす原因ウィルスの名前です。

HIVに感染すると、大きく3つの経過をたどります。感染初期(急性期)、無症候期(症状が出ていない状態)、AIDS発症期です。

AIDSの感染初期(急性期)・初期症状

感染したウイルス(HIV)が急激に増える段階です。この時には、発熱、だるさ、筋肉痛、リンパ節が腫れたり痛んだり、また湿疹ができたりしますが、数週間で症状は消えてしまいます。

AIDSの無症候期

症状が消えて、治った感じになる無症候期を迎えます。この時も同様にウイルスは増えているのですが、まだ、残されている免疫機能により症状が抑えられている状態にあります。

AIDSの発症期

残された免疫機能が落ちてしまうと、AIDSを発症します。AIDSは、以下のいずれかの発症により判定されます。

  • 真菌症(カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)、クリプトコッカス症(肺以外)など)
  • 原虫感染症(トキソプラズマ脳症、クリプトスポリジウム症など)
  • 細菌感染症(化膿性細菌感染症(敗血症など)、再発を繰り返すサルモネラ菌血症など)
  • ウイルス感染症(単純ヘルペスウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症など)
  • 腫瘍(カポジ肉腫、原発性脳リンパ腫など)
  • その他(反復性肺炎、HIV脳症など)

検査を受けるタイミング(目安)

性病(性感染症)検査はどのタイミングで受けたらいいでしょうか。検査のタイミングを目安でご紹介します。

クラミジア(膣/咽頭/尿) 気になる性交渉から1週間後
淋病(膣/咽頭/尿) 気になる性交渉から1週間後
トリコモナス 気になる性交渉から1週間後
カンジダ 気になる性交渉から症状が現れたら
梅毒 気になる性交渉から4週間後以降
HIV 気になる性交渉から3ヶ月後以降
B型肝炎 気になる性交渉から3ヶ月後以降
C型肝炎 気になる性交渉から3ヶ月後以降
ヘルペス 気になる性交渉から症状が現れたら
コンジローマ 気になる性交渉から症状が現れたら

性病検査の費用

クラミジア(膣)検査4,500円
クラミジア(咽頭)検査4,500円
淋病(膣)検査4,500円
淋病(咽頭)検査4,500円
HIV検査3,600円
梅毒検査2,300円
STD検査
(セット内容:クラミジア検査・淋病検査・HIV検査・梅毒検査)
13,100円

※別途、初再診料がかかります。
※保険適用の場合もあるため、保険証をお持ちください。